2009/11/21
/08:32
ある人のコラムより抜粋。 そんなに長くないから読んでみてください。 かつての貧乏な少年が、
いまの貧乏な少年に忠告してあげたいこと、
いくつか先日、僕が以前から私淑しているナイスなおじさんとコーヒーを飲んでいるといつものようなたわいない雑談に混じって興味深い話をしてくれた。
おじさんが布を京都の職人に手仕事で織ってもらったときのことだ。 おじさんはいつもは日本製の糸でお願いしていたが今回は訳あって中国から糸を取り寄せたのだという。
「それは白い糸だった。 よくある、日本でも有名な企業が使っているような 普通の糸を中国から取り寄せたんだ。 ところが作業を進めると職人が倒れてしまった。
高熱が出て、吐き気がする。 病院に行っても原因は分からない。 数日経ち、治って、 また作業を進めるとまた同じように身体を壊してしまう。 その繰り返し。 ある日、職人から電話がかかってきて、 自分の体調不良の理由が分かったと話してくれた。 『白い糸』が原因なんだ、と。 職人は糸を織るときに口に糸を含むんだね。 つばをつけて。 つまり、白い糸に使われている染色剤が毒薬で 知らず知らずに職人は毒薬をなめていたということ に彼は気付いたんだ。 これはとても恐ろしいことだね。 布に長年従事していた彼ですら恐ろしくて 仕方がないといっていたよ。 白い糸といっても染色されている。 糸に本来白という色はないからね。 白い染料に漬けられていた糸。 その染料が毒だったというのはたまらない」
毎日ネットをいじっている僕でも初耳の話なので「その話、本当ですか?」と話しの間に軽口を入れてみるもののおじさんは「本当だよ」と僕の目をまっすぐに見て話し続ける。
「いま我々が身につけている衣類のほとんどが 中国で作られているからね。 子どもの多くが皮膚病やアトピーになるのも そうした糸で作られたタオルを口にくわえたり 敏感な時期に身につけていたからかもしれない。
毒ギョーザもそうだけど 衣食住すべてに渡って僕らは手痛いしっぺ返しを 受けはじめたのかもしれない。 なぜなら僕らが搾取する側として 一方的に中国に重荷になる部分は 押しつけてきたからね。 その代償として、中国は目に見えない形で お返しをしてきたんだ」
僕の頭の中にはかつてニュースサイトで見かけた工業汚染で赤や青や緑になった不気味な中国の河川の写真が何枚か浮かんでは消えた。
中国の環境汚染は深刻だ。 僕はそのとき、中国の汚染は国民の環境意識の低さの問題だと遠目に残念がっていた。
しかしそれが日本をはじめとする企業の責任もあるのだと思うと…、途端に何ともいえなくなる日本人の僕がいる。
「手作業だから職人は気付いた。 機械で作っている会社だったら 気付くことはなかった、というのも怖い話だよ。 知らないうちに問題のある商品が 何食わぬ顔してばらまかれているのだから。
何よりももっと怖いのは、 機械で作っている会社がそれを知っていて、 売っているかもしれないという可能性だよ。
もしそうだったら最低だろうね。 日本のお金持ちや国が結託して、 情報を出していないんだよ。 とてもいけないことをしているということだよ」
僕は自分のはいているパンツとTシャツが気になって仕方がなくなってしまった。 というのはどちらもメイドインチャイナでオーガニックコットンなどじゃないチープな衣類だったから。
おじさんの話を聞いているとムズムズして仕方がなくなってくる。 僕は仕事を理由に席を離れることにした。 帰り際、おじさんが僕にむかしを思い出して懐かしそうに語ったこのセリフが忘れられない。
「むかしだったら貧乏人と金持ちの差というのは、 汚いかキレイか、本物か偽物かぐらいだった。 金持ちはキレイな洋服を着て、 貧乏人は破けた服を着たり 偽物ブランドを着ているくらいの…。
ところがこれからは貧乏人は安物衣料や 食料を買うことで病気や死ぬことになるんだろうね。 これはとてもむごたらしい。 時代が変化すると、 なんだか予想もしない話が出てくるよ…」
中国が悪か、日本が悪か、企業が悪か、資本主義が悪か、なんて話はナンセンスだろう。おじさんの話の真意ももはや。
とはいえ、おじさんが話してくれた未来予想図はありえると思ってしまった僕は居心地の悪い洋服を身にまとい神妙な顔つきで明け方の町を歩いて家路につくのだった。
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